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2日後、玄関のチャイムが鳴った。
「こんにちは」
いつも通りヒューマノイドから荷物を受け取る。
「ミドリは?」
「ミドリが何だって言うんだ?」
俺は思わず言い返してしまった。
「ママになんて口の聞き方するの」
ヒューマノイドは俺から箱を引ったくり、立ち去ろうとした。
「ママ」
俺は仕方なく呼び止めた。
「なに? エニシ」
ヒューマノイドは打って変わって優しい声音を発した。
俺は例の赤い実を見せた。
「リンゴね。リンゴの実の花言葉は……“後悔”デス」
一瞬、変な話し方をしたかと思えば「実は回収するから」と言って俺の手からリンゴを引ったくった。
“後悔”。
ヒューマノイドが帰ったあと、球体のカプセルをもう一度観察した。
内側にできた無数の傷が光る。指でなぞると、そのうちの幾つかの線は意図的につけられた溝だと分かった。
その溝は“ミドリ”と読めた。
ミドリのカプセルなのか? ミドリが俺にリンゴを?
分からなかった。
ミドリがもし意図的にリンゴを流したのだとしたら、俺に伝えたいのはきっと、家を出たことを“後悔”している、ということだろう。
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