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5分後に配給が来る。
3日に一度、ヒューマノイドロボットが海の向こうからやってきて食料と生活に必要な物資を運んでくる。
「俺は行くからな」
自分と同じ顔をしたエニシは言った。母さんが言うにはエニシのほうが1分早く生まれた。だからエニシが兄。
「今日は人間が来るかもしれない。危険だよ」
3日に一度の配給の、3回に1回は本物の人間が僕たちの星に来る。
僕とエニシがきちんと生存しているか、脱走の計画を立てていないか、確認しに来るのだ。
「人間は前に来ただろ。2回連続で奴らが来ることはない」
チャンスだと思わないか? エニシは僕を見た。
「何のためにここから出るの?」
あの時、母さんは家で待ってなさいと言った。
「脱走がバレたら人間たちに殺されるよ」
「殺しはないさ。ミドリだって殴り返されただけで済んだだろ」
15才のとき、僕は見回りの人間を殴った。10年前の話だ。その時の記憶はあまりない。
「あの時は僕たちも子供だった。今は違う。奴らは何だってするよ」
見回りの人間はいつの頃か銃を持ち歩くようになった。そして野鳥を2、3発撃ち落としてから帰っていく。
何の意味もない行為。ただの気晴らし。
死んだ鳥はいつも僕が庭に埋めた。埋める意味もないかもしれないけれど、僕にはそうした方がいいように思えた。
玄関のチャイムが鳴った。配給の時間だ。
「家で呑気に留守番してるだけじゃ何も変わらない」
「二人が帰ってくるって信じてる。だから、エニシも大人しくここにいてよ」
僕は玄関に向かった。早く出ないと怪しまれる。
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