ショートショート「最後の取引」

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ショートショート「最後の取引」

28f200b4-b046-4017-8e67-487ea6d3446a 後はもうタップするだけだった。 僕の寿命は誰か有意義に使ってくれる人に売る。 お金に困っているわけではない。 死にたくなったわけでもない。 ただ、誰かに寿命を譲りたかった。 これが正義かと聞かれれば返答に困る。 でも、相手はきっと喜んでくれるはずだ。 このフリマアプリはどんな物でも売れる。 そして、売った物は確実に相手の手元に届く。 だから、僕は残りの寿命を出品した。 僕はスマホからそっと手を離した。 これで取引は終わり。 正真正銘、最後の取引。 残りの寿命は相手の元に・・・。 僕は目を瞑った。 きっと、このまま寿命が・・・。 ・・・終わるはずだった。 ・・・僕は目を開く。 おかしい、寿命がまだ終わっていない。 僕は急いでスマホを覗いた。 アプリは相手からメッセージが来ていることを示していた。 僕はメッセージを開いた。 相手からのメッセージにこう書いてあった。 「あなたの寿命をありがたく頂こうと思っていました。でも、やめました。だって、あなたの寿命はまだこれからだから」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!