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俺の家は一戸建ての賃貸だ。お父さんは家を建てようと思っていたらしかったが、俺は一人っ子だし、ここは田舎だ。都会に出て結婚でもされたとき大きな家があると困ると思って、断念したらしい。でも俺はまだ彼女もいない。中学生のとき、告られたことがあるが何か違うと思って付き合わなかった。
ダウンジャケットを着てゆったりとしたデニムをはくと、お父さんにお昼はいらないことを言って家を出た。黒い自転車の鍵を開ける。茶色いサドルに跨って和樹の家に行くため自転車を漕ぎ始める。空のあまりの青さに感動を覚えた。こんないい日に家に引き籠っているなんて出来ない。
和樹の家のインターホンを押す。スピーカーから声がした。すぐ行くから待ってて、と言う。俺は塀に寄り掛かって和樹が出てくるのを待った。塀は白くて吹き付けがしてある高そうな塀だ。流石金持ちの家は違うな。ドーベルマンが繋がれているのが鉄柵の隙間から見えた。しつけが行き届いているのか、あまり鳴かない。
和樹は俺が着ているダウンジャケットに似ているものを着て出て来た。まあ、今の季節に出掛けるんだからこういう服が無難か。ダッフルコートとかだったらサイクリング向きじゃない。それに行先は自然豊かな農林公園だ。泥で汚れてもすぐに落ちるアウターの方がいいだろう。和樹は大荷物を自転車の籠に入れて顔を綻ばせた。そして自転車を車庫から出した。
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