不思議な試合を見たんだ

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不思議な試合を見たんだ

 春先に見たプロ野球の試合のことなんだけど、いい試合の割にはスッキリしない展開だった。 仕事を終えて街中を歩いていると野球のユニフォーム姿の集団を見つけた。 ああ、野球観戦に行く集団なんだな。それを見て僕は懐かしさを覚えた。 正直なところ、僕は野球にあまり興味はないし、詳しくはない。スポーツニュースで順位を見て「ああ、そう」と右から左に流すぐらいだ。野球観戦も遠い昔、と、言っても十年ぐらい前に友人との付き合いで行ったぐらいだ。 家に帰ってもどうせ暇と言うことで僕は久々に野球観戦をすることにした。本当に深い考えはない。ただ、仕事の帰り道に野球場があったから見てみるかと言った至って軽い気分なのだ。 まず、球場脇にある宝くじ売り場を思わせるボックス状のチケット売り場でチケットを購入。外野自由席を頼んだのだが、今や全席指定席が普通でそんなものは無いと売り子のオネーチャンに言われてしまった。立ち見であれば自由席なのだが、仕事終わりに何時間も立つ程マゾではない。ホーム側外野指定席一枚を購入し、球場の中に入ることにした。 トンネルを思わせる長い通路を抜けると、そこは球場全体を見渡せる外野エリアだった。まだ試合開始前なのか応援団が場内アナウンスに合わせてスターティングメンバーの応援歌を演奏する。トランペットと太鼓の音を聞くと「球場に来たなー」と、言う気分になりテンションが上がる。 選手一人一人に応援歌はあるのだが、僕みたいな今日たまたま来ただけのにわかには歌えるようなものではない。笛と太鼓に合わせてメガホンを叩くだけだ。 席は応援団のすぐ近く、コールのよく聞こえるいい席だ。
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