夢は忘れてしまっても

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 と、そのとき、先野の白いスーツに、三条は急になにかを思い出しかけた。だがはっきりとは思い出せず、言葉が出てこないような歯痒い気持ちに似た苛立ちを覚える。 (なんだったろう……)  デスクに戻って紅茶をすすり、落ち着いて思い出そうとした。  先野と関係があるのだろうかと、そちらを見たとき、一瞬、目があってしまった。そのとき、ぞくりと寒気のような感覚に襲われた。ありえないことを経験したような気がした。  勝手に気まずく感じ、三条はパソコンで予定表を確かめる。今日は依頼者との面談の予定があったはずだ。 「そろそろ面談コーナーに行こうぜ」  いつの間にか先野がすぐそばに立っていた。その唐突さにも、心にひっかかるものがあった。  改めて予定表を見ると、先野と共同で調査する案件の予定が入っていた。間もなく依頼者が面談コーナーに来る時刻だった。
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