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そして、彼女もその内の1人。
弥生はこの神社へ入ると、不思議な存在へと変わる。
この神社の桜がずっと咲き続けているのは彼女がいるから、らしい。
桜が散らなくなったのも14年前、僕らは今中学2年生だから――辻褄は合う。
僕は3カ月前にその事実を知った。
あまり驚きはしなかった。
彼女は普段とあまりにも違ったから。
気の強かった彼女は無表情で物静かな少女へと変貌する。
これは――『代償』の所為らしい。
不思議な存在の者は必ず代償を受けなければいけない。
その代償が彼女の場合、『感情』だったのだ。
だからこの鳥居をくぐっている間、彼女は感情を失う。
そして僕は、この事実を知った時に――彼女を支えていこうと決めた。
感情がなく、右も左もあやふやな彼女を1人には出来ないと感じた。
なら、此処に来なければいい。最初はそうも思ったが――弥生はいつも、この場所を望んでいた。
それは『大峰さん』でも『弥生』でも変わらない。
ちなみに僕は、普段の彼女を『大峰さん』、此処にいる時の彼女を『弥生』と呼んでいる。
彼女も同じく、普段は『天川くん』、此処にいる時は『結弦』と呼ぶ。
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