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売りに出された空き地に、西からやってきた一匹をおびき寄せる。ある程度広い場所でないと武器を振り回せないからだ。警棒で叩き伏せて始末すると、鷲澤と同じ身長の怪物が霧散して消えていった。
一撃叩けばこの有様なので、一匹だけなら脅威にもならない。ただ、これが複数寄ってきて囲まれると、受傷を避けられなくなる。奴らは防御力は低いが攻撃力が高い。粘液状の体から繰り出される一撃が重いのだ。
鷲澤は神経を研ぎ澄まし、刻一刻と変化する探査状況から今後の戦況を予測した。アプリがあるので、探査するのは半径五百メートル先からで良い。
「東側一キロ先に二十の群れがいます。今から来る奴らは三分で片を付けないとしんどいかと」
「了解だ」
その直後、十の粘液が空き地に押し寄せる。思ったより少ない数だが、南東九百メートル地点で十五匹が固まっている。別企業の処理課と交戦しているようだ。
兵藤が先行して数を減らしていき、鷲澤は兵藤が伐ち漏らした分を的確に叩いていく。兵藤の動きは巨体に似合わぬ俊敏さを持ち、敵からの攻撃を一切食らわずに叩きのめしていった。一息つくと、すぐに二十の群れが百メートル圏内に入る。
「鷲澤、アプリ圏外の状況は?」
「南東一キロ先に二十……いや三十いますけど、動きが鈍いしこっちに向かってこないんで、他社の処理課と交戦中なんでしょう。で、その三十とこっちの二十に向かって、全方位から数匹ずつ集まってきてます。こっちにも断続的に、合計十匹くらいは来るでしょうね」
「三十か。それでキリがついたら帰るぞ」
鷲澤は半径五百メートルより先に意識を配りながら、二十の群れに向かって警棒を振るう。しかし、始末した先から少しずつ数が増えていく。次第に囲まれていき、否が応でも神経をすり減らさざるを得なくなる。
「三十でも済まないっすよ、累計で四十はいるんじゃないっすか」
「もう半分以上片づけただろ。一気に来られるよりマシだ」
苦戦が予想されたが、背中合わせで戦っている兵藤の危なげない立ち回りのお陰で、数を大きく減らすことができた。背後に不安がないなんて、初めてのことだった。
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