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浩二からの裏情報を得て、ホテルの部屋に戻り、残っていた裏導線図も書き込み終え、宿題を完成させた。完璧なレポートだ。
哲也はベッドに横になってスマホで何か探している。
「あったぞ」
「何が」
「1986年、ロートレックの《マルセル》盗難事件」
「どれ見せて!」
「1968年、京都国立近代美術館で開催されていたロートレック展の最終日に
油彩絵画の一つ《マルセル》が消えた。当初の熱狂的なファンの仕業と考えられていたが、その後は発見されることもなく、事件から7年後の1975年に窃盗罪の時効が成立した。
その1年後、大阪に住む会社員より「盗まれた《マルセル》ではないか」と新聞社に連絡があり発見に至る。
会社員によると「《マルセル》は知人で京都に住む中学教諭から預かったもので、風呂敷に包んだまま中身を確かめずに押入れに置いたままにしていた」と言う。その後の調べでは、中学教諭は「知人から預かり中身を知らなかった」と言っている。
すでに時効成立の為、それ以上の真相を追求する事はできなかった。
「オイオイ、この中にホテルのオーナーが入っとった可能性があるという事か?」
「そう言う事だな」
「で、今度の盗難はなんて言うたっけ」
「フェルメールの《合奏》」
「それそれ、調べてみてくれよ壮太」
言われるままにスマホで検索すると、すぐにヒットした。
「《合奏》はオランダの画家ヨハネス・フェルメールによって1664年頃に描かれた作品である。1990年にアメリカ・ボストンにある美術館より盗難に遭い、現在も未解決で発見に至らず」
「マジかよ、どうしようと言うんだ横川さん!」そう言うと哲也はベッドに倒れ込んだ。
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