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横川さんと別れた後、一旦、部屋に戻った。
部屋に入るなり僕は哲也に言った。
「おい哲也、大丈夫なのか」
「特に危険な事でもないし・・なんとかなるさ」
「そうかもしれないけど・・・」
「こんなええ部屋に泊まれる訳がわかったな。オーナー発注の仕事であれば、ええ部屋を提供しても安いもんだよ」
「もし、フェルメールが見つかったらどうするんだ」
「そらその時さ、俺達が考える事おへんよ、横川さんの方の問題や」
その時、哲也のスマホが鳴った。横川さんからの着信だ。フェルメールの《合奏》の絵が添付されているのであろう。
哲也はしばらく眺めるとスマホを僕に渡してきた。
《合奏》が添付されていた。
薄暗い部屋の中で、女性が二人、男性が一人描かれている。立ち上がっている女性は歌を歌っているのか・・・あとの二人は演奏をしているのであろうか、
左手奥には窓でもあるようだ、やわらかな陽が差し込んでいる。
眺めていると、その絵の中に吸い込まれて行きそうな不思議な力がある。
「壮太、美術館でも行ってみるか」
「え!」
「とりあえず、明日までには時間もあるし、例の『京都国立近代美術館』だっけ?」
「いいね、横川さんや浩二が言っていた、昔『ロートレックの《マルセル》が盗難にあった美術館だろ」
「ここからなら歩いても20分位やろう」
「近くだし、行ってみよう」いつも思うことだが、哲也の思い付きと行動力には感心する。最初は不安を与えるが、結果オーライな事が多々ある。
ここは哲也の提案に乗って行った方がよさそうだ。
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