【2日目 8月2日】

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ホテルのある祇園四条から鴨川沿いに歩き、二条通りに出たら右に折れて、しばらく行くと『京都国立近代美術館』が現れる。 外の暑さに耐えきれず、避暑を求めて中に入る。 絵画音痴の二人でも、美術館の展示空間は、僕らふたりを十分に魅了させてくれる時を与えてくれた。絵に向かい合う自分に、オーナーの気持ちがわずかに乗り移つった気がした。 そして1~2時間も過ごしたのであろうか、美術館を出て公園を抜けて 、来た道を戻り出している。僕は哲也に言われるまま美術館について来た事が、やはり正解だったと思い、満足感に浸っていると・・ 「なあ、あの美術館の建物は1986年にリニュアルしたんだって。と言う事は、ロートレックの事件は1968年そやし、その後に建てかえがあった訳か」 「横川さんの話によると、オーナーの歳は85歳ということだから、30代の時の事件だな」 1968年の京都国立近代美術館から消えたロートレックの《マルセル》盗難事件。 それとフェルメールの《合奏》行方不明事件。 この二つが、ホテルのオーナーと何か繋がっているのだろうか。 「名画を盗んで、自分のものにしたくなる気持ちも分からなくはないな・・ 」哲也の言う通り、僕もそう思う。 もちろん中にはお金目当ての人もいるだろう。でも自分の所蔵にしてみたくなる人がいるから、お金のために盗む人もいるのだろうと思う 気が付くと、二条通りを抜けて鴨川沿いに出ていた。暑さも多少和らいで、鴨川は傾きかけて陽の光を映して、川面がキラキラと光っている。
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