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魔法のステッキ
その敵は古い黒板が変化したバケモノだった。いつものように魔法のステッキで変身しようとして、鞄を探ったが、ステッキがない!?
「あれ、どこ?」
敵を前にして焦りながら、鞄の中を覗き込む。
敵の黒板ミサイルが飛んできた。やばいと思わず鞄を盾代わりに掲げたとき、ピンクのヒラヒラのコスチュームをまとった少女が、その黒板を蹴って弾いた。
「ほのか、下ってなさい」
「え?」
そのいきなり現れた見知らぬコスプレ少女に名前を呼ばれて首を傾げながら、言われたとおり教室の隅に下がる。
なんで私の名前を知ってるの、それに、その子が来ているコスチュームは、私が、魔法で変身した時のそれとそっくりだった。私の戦いをどこかで見て、真似てコスを作ったのか。いや、違う。私のステッキを盗んで変身しているんだと、すぐに気づいた。戦いは、その見知らぬ魔法少女の圧勝だった。そして、
「けがはないようね、じゃね」
私に怪我がないと確認するとさっさと教室を去って行った。
もちろん、わたしは、その魔法少女の後を追って、自宅に急ぎ、台所で何食わぬ顔で立っている母親を詰問した。
「お母さんでしょ、私のステッキ盗んだのは!」
「盗んだなんて人聞きの悪い、ちょっと借りただけでしょ」
「いいから、早く返してよ、いい年したおばさんが、いまさら、魔法少女じゃないでしょ」
「これ、すごいわね、衣装が出るだけじゃなく、魔法少女らしい年齢に変身できるのね」
「返して!」
私は母からステッキを奪い返そうとした。
「あら、いいじゃない、あんな危ないこと、子供に任せるのはどうかとお母さんは思うんだけど」
「なに、言って」
「あんた、最近成績が落ちたのは、あんなことしてるからでしょ」
「うっ・・・、だって、私が頑張らないと大変なことになるから」
「成績が元に戻るまで、これは没収」
「お、お母さん!」
「子供は、勉強が仕事なの、あんな危ないことより、お母さんは勉強して欲しいの」
「ふん、どうせ、魔法での若返りに味を占めただけでしょ、返して」
「ダメ、返してほしければ、今度のテストでいい点とりなさい、あんただって、自分の成績が落ちている自覚はあるんでしょ」
「でも、この街をまもらなくちゃ!」
母とステッキの取り合いをし、そして、勉強と魔法少女の活動を両立させると渋々母と約束して、ようやくステッキを返してもらった。が、私が学校の行事などで忙しい時など、度々、母は私のステッキを持ち出して、勝手に街の治安を守ったりしていた。
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