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とある本屋
とある場所にある、とある本屋の物語。
ショッピングモールや、駅前にあるような大手チェーン店の本屋ではなく、
街中にあるホント小さな小さな本屋の物語。
昔ながらの引き戸を引くと「ギィー」と音がなるぐらいの、小洒落てもいない本屋がある。
その本屋には、犬と猫が放し飼いで飼われている。
いつものように本屋の引き戸を引くと、いつも現れるのは、二郎と言う犬一匹と、サボと言う猫一匹。
その犬は、わたしが本屋に入ると、いつも近くにすり寄り、十回に九回と言っていいぐらいに本を選んでいる足元に来ては、おすわりをする。
するとわたしの手は、選んでいる本から離れ、思わず、いや、絶対的といいぐらいに二郎の顔を撫で、喉仏をゴロゴロとする。
気持ちいいのか、細い細い目をしてジッと隣で寝息を立てるかのように、いい顔をする。
そして猫のサボは、最初はそれをじーーっと見るだけで、近寄りもせず視線だけを感じる。
犬の二郎を可愛がっていると、俺にもしろよと言わんばかりに猫のサボが、犬の二郎とは反対側に陣取り、おもむろにひっくり返り腹を突き出す。
うむ。これまた可愛いと思い、右に二郎。左にサボと言う具合にゴロゴロと喉仏と、腹を摩る。
また猫のサボも犬の二郎もいい顔になって、目を細めるのだ。
そうなると、わたしは、両手犬と猫に囲まれ十分ぐらいペット屋に来たような気分なる。
店員も、普段行きつけで顔馴染みだからか、その行為に対しては、何も言わず、じっと見守る。
だが、二郎とサボは、誰かれしにも、すり寄り腹を出すわけではない。
たまにタバコの匂いをプンプン匂わしながら入ってくるおやじには、
「お前なんか来るな!」
と言わんばかりに吠え、店員の
「やめなさい!」
と言う声が店内に鳴り響くのだ。
そういう意味では、吾が輩は、この犬の二郎と、猫のサボにはかなり好かれているわけだが、問題がひとつ。
「おめーらのせいで、今日も本が選べねーよ!」
了
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