Another world

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Another world

 男は眠れずに、ベッドから起きた。2DKのアパートの寝室から出てキッチンに飲み物を取りに行く。  お気に入りのマグカップを棚から出すと、冷蔵庫から取り出した牛乳を注ぎ、レンジで『あたため牛乳』に設定して1分待つ。  チンとレンジ音がした後、牛乳を取り出し、キッチン横のリビングとして使ってある部屋のソファーに座る。暗がりの中、時計を見ると午前1時を回っていた。  寝室では、付き合って3ヶ月の彼女が寝息を立ててぐっすりと眠っている。その最中、物音を立てずにパソコンを開いて起動させた。ノートPCの起動音とファンが深夜の小さな部屋に響いた。  男はオンライン(ネット)に接続し、とあるSteamサイトに接続した。深夜にゲームでもするつもりなのか、幾つものタイトルが並ぶ。  中には新作と書かれたNEWマークのパッケージ写真がある。その中の一つ。ターミナルシティと書かれたパッケージロゴの写真上に、マウスポインタを持っていく。男は一口牛乳を口に流し込む。  30秒ぐらいの予告編のような映像が流れ始め、男はその映像を食い入るように見ていた。だが、少し違ったのか、男はポインタを別の画像に合わせた。  どうやら男は、タイトルに惹かれ、そのまま予告編を見る間もなく、画像をクリックしていた。  暗がりの部屋の中、ノートPCの明かりだけが煌々としていた。音声と映像が流れ始める。  Are you ready  女性AI音声と共に男は、ヘッドセットを頭につけ、小さくPCに語りかけるように「準備はできた」と言った。  Ready!  女性AI音声が流れると男の目の前は揺らぎ、時空の粒子が高速で移動しているように、まるで宇宙空間にいるように、星が高速で移動し始めるような感覚に襲われた。  Will you be the hero?(主人公になるか?)  男はAI音声に小さく頷き、手元の指を空中で、マウスクリックするように人差し指を下へスライドさせた。  男の目の前には現実と変わらぬバーチャル空間の世界が広がった。男にとって、この空間は、生きるか死ぬかのもう一つの世界。武舞台が現れ、目の前に武闘着を着た戦士が現れた。男は、拳をグッと握り締め、『Round fight!』とヘッドセットに音声が響いた。 『DEAD OR ALIVE Another world』  2022年1月。5Gが普及した時代。  ゲーム格闘の主人公になり、格闘技で、バーチャル空間格闘技で戦う。勝つとSteam内のマネーが増え、実生活で換金もできる。もう一つの世界でお金を稼ぐ時代が来る…………かもしれない……。
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