幹と美樹

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 ある日の国語の授業で、僕は黒板に書かれた幹先生の字が気になった。  幹先生の文字は、幹先生らしい字だった。几帳面で、細い。トメ、ハネがしっかりしていて、模範的な字。でも文字の幅は全体的に狭いから、(ほそ)(おもて)な印象。丁寧というより几帳面。  幹先生の文字は、幹先生そのものだった。   ――そうか。文字は、その人そのものを表すのか。    僕はノートに書いた自分の文字を見た。男子にしては丸い。ただ、全体的にサイズが小さくて、ところどころ潰れている。丁寧とは程遠い。ふにゃふにゃで丸まった字。  名前だけじゃなくて、普段の字も丁寧に書こうかな、と思った。なんとなく、その方が良いような気がした。
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