幹と美樹

11/45
前へ
/45ページ
次へ
「ミッキーってさ~、字が女子っぽいよね!」  ある日のこと、席替えで隣になった西崎さんは、僕のノートを無遠慮に覗き込んだ。西崎さんは僕のことをミッキーと呼ぶ。僕は自分の下の名前を呼ばれるのがどちらかというと苦手なのだが、彼女があまりにも悪気なくそう呼ぶので、まぁいいかと納得している。 「やっぱりそう見える?」  自分でも感じたことを、他人にも指摘され、僕はすとんと納得した。不思議と嫌な気持ちにはならなかった。 「うん。あ! でも全然悪いって意味とかじゃなくてさー、なんか、字が丸いから優しい印象だよね!」 「優しい?」 「うん! ほら、ミッキーって大人しいけど気配りとかできて優しいじゃん!」  そうかな、と僕は首を傾げる。僕は自分のことを優しいとは思ったことがなかった。  大人しくて、御しやすいから、人から軽んじれる。僕にとって僕という人間は、そういう印象だ。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加