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「うん! ほら、前あたしが国語の課題終わってないときも、終わるまで待っててくれたじゃん!」
――あぁ、そういえば。
「……そんなこともあったね」
「そうそう! 普通だったらあたしにノート運ばせるの押しつけて帰るっしょ!」
――そういうものなのだろうか。
「……優しいなんて、初めて言われたよ」
「あたし、ミッキーはめっちゃ優しいと思うよ! そこは自信持っていいっしょ!」
西崎さんは、親指を立ててグーサインを作った。
「……ありがとう」
僕は西崎さんのノートに書かれた字を見た。羅線など全く無視して、自由帳のように、好きなことを好きなように書いている。だけど、びっくりするぐらい彼女の文字は、洗練されたように澄んで、整っていた。文字だけ見れば、いつも学年一位の秀才みたいだ。
「西崎さんは、字が綺麗だね」
「えへっ! ありがとっ! うちのおばあちゃんがさ、書道教室の先生だから、字は綺麗に書けって昔から厳しくて。あたし、自分の字には自信あるんだよね!」
彼女のことだから、てっきり大きくて丸いギャル文字を書くのかと思っていた。勝手に勘違いしてごめんなさい、と心の中で彼女に向かって謝る。
――文字は、その人そのものを表す。
彼女は、この陽気な見た目と性格とは裏腹に、こんなに洗練された美文字を書く。
文字というのは、実はとても奥が深いものなのかもしれない、と西崎さんを見て僕は思った。
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