幹と美樹

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 僕の母親はシングルマザーだ。父親は、僕が幼稚園の頃病気で亡くなった。母親と二人三脚で生きてきた。母親は仕事が好きだと言って、介護の仕事を頑張ってはいたけれど、でも子供の僕からすると『大変そうだなぁ』としか思えなかった。    僕も大学には興味があった。ただ、母親が一生懸命働いている姿を見ると、わざわざ行く必要があるのかな、とも疑問だった。  もし自分に明確にやりたいことがあれば、そのために進学が必要なら、僕は母親に『進学したい』と伝えただろう。僕の母親は遠慮を嫌う。特に僕は言いたいことを自分の中で消化して、なかったことにするタイプなので、母親は僕の意志や想いをなるべく引き出して、それらを叶えてあげようとしてくれる。  ――しかし今回ばかりは、母親への遠慮なのか、進学したいのかしたくないのか、自分でもよく分からなかった。
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