幹と美樹

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 最初はかなり時間がかかっていたけれど、少しずつ要領を掴んでうまく書けるようになった。日記で自分の想いを素直に表現できるように、色んな小説を読んでみた。小説は、語彙や表現の宝庫だ。いい言葉を見つけると、付箋を貼って、日記帳にメモをした。  夏休みになると、日記はすらすら書けるようになった。そして、日記の参考になればと読んでいた小説にのめり込んでいった。それまで読書とは縁程遠い人生を送っていたが、文章ひとつで人を魅了し心の揺さぶる小説という存在に、僕は取り憑かれてしまった。  秋を迎える頃には、自分でも小説を書きたくなって、日記帳とは別にノートを買い、そこに自分の物語を綴るようになった。やっぱり小説は日記とは全く違って、最初は苦戦したけれど、そんな試行錯誤も僕にとっては、どこか楽しく、心地よかった。
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