幹と美樹

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 肝心の進路は、なかなか決まらなかった。僕は、母親への遠慮も、大学への興味も、どちらも少しずつあって、天秤が揺れる。今日はこっちだ、と思っても、明日にはあっちだ、となる。  そんな不安定な想いに気がついたのは、日記を書いていたからだ。僕はよく、進路に関しての悩みを日記に残していた。  母親にその天秤の話をした。 「そうなのね。じゃあ今日はどっちの気分なの?」  ――と、聞かれた。 「今日は大学の気分」  その日僕は取り寄せた大学のパンフレットを眺めていたので、気分は進学寄りだった。 「じゃあ大学に進学したら?」 「えっ! でも……」 「どっちにしろ毎日迷うなら、どっちでもいいってことよ。それにどっちも選べる都合いいの選択肢なんてないんだから」  確かにそうかもしれない、と思った。  母親の言う『どっちでもいい』は、適当だとか、投げやりだとか、そういう意味ではなくて、どっちにもそれ相応の魅力があり、どちらを選んだとしても最善だということ。それにもし、仮にどちらを選んだとしても、僕はきっと少し嬉しいし、少し後悔するだろうから。
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