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幹先生は、ぜひ読んでみたい、と返信をくれた。だが、僕はなぜか無性に恥ずかしくて、自分の書いた小説を読んでもらう勇気が出てこなかった。その代わりに、じゃあ僕が作家デビューしたら買って読んでくださいね、と冗談交じりに綴った。
――それは楽しみです、と葉書に書かれた幹先生の文字に、僕はどきっとした。たぶん、先生は僕が冗談で『作家デビュー』などど書いたことを理解している。でも、『それは楽しみです』という文字が、踊って見えた。本当に楽しみにしていることが、彼女の文字から伝わってきたのだ。
その日の日記に『本気で作家を目指してみようかな』と書いた。次の日、改めて読み返して『やっぱり目指そう』と決めた。
それまで娯楽でしかなかった小説が、その瞬間――僕にとっては使命に変わった。
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