幹と美樹

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 休日は原稿用紙にかじりついた。自分の伝えたい心情や情景を、言葉や文章にして表すのは、やはり難しい。頭を捻って、試行錯誤して、悩みながら、ペンをひたすら動かした。  ようやく書き上げた一遍の小説を、出版社に送った。返事はもちろんなかった。しょうがないよな、とため息をつくのと同時に、僕の中で悔しい、という気持ちが湧き上がった。もっと頑張りたい、作家としてデビューしたい、と心の底で炎がメラメラと燃え出した。  まさか自分がこんな熱い気持ちになるなんて、自分はここまで小説に対して本気だったのか――と、このとき僕は小説を通して新しい僕に出会った。  それから色んな賞に応募した。どれも軒並み落選だった。でも僕は、入賞するまで、デビューできるまで続けようと心に誓っていたので、落ち込む暇もなく、もくもくと小説を書き続けた。
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