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幹先生は、メモ用紙に自分で『幹先生へ』と書いて、サイン本の隣に置いた。
「あなたの字を真似て書いたわけではないんですよ。でもね……」
幹先生の字は、僕が高校生だったときよりも文字の幅が広くなって、ふんわりとした柔らかさを感じられる。僕の字と比べると、ぱっと見の印象は瓜二つだ。
「……本当だ」
――いつの間に、僕らはこんなによく似た字を書くようになったのだろう。
「不思議ですね」
幹先生の口角が少しだけ上がって、透き通った薄茶色の瞳が、微かに細まった。
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