幹と美樹

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 ――私は高校生の頃、自分の家庭のことや人生について、かなり悩んでいて、それをその教師に相談しました。  そうしたら――名前を丁寧に書きなさい、と言われたんです。  突拍子もないことを言われたので、私は驚きました。なんでそんなおよそ悩みと関係ないことを言うんですか? と。その教師に聞いても、頑なに答えは教えてくれませんでした。  なにぶん当時、私は八方塞がりで困り果てていたので、訳もわからず、とりあえず、自分の名前を丁寧に書き始めました。最初のうちは、なんであの教師はこんなことをさせるんだろう、とずっと疑問でした。でも時が経つにつれて、少しずつ分かってきました。
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