幹と美樹

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 ――私は、私のことをおざなりにしていました。  学校でも、家庭でも、人生でも、自分が我慢すればうまくいくと思っていました。でもそれは間違いでした。自分が幸せでなければ、何もうまくいかない。当時の私はとても字が雑だったんです。名前なんて適当に書いていましたよ。その教師は、自分に我慢を強いていた私のことを見抜いていたんだと思います。  名は体を表す、という諺がある通り――名前というのは、人生そのもの、自分そのものです。  だからこそ、丁寧に扱わなければならない。どんなに急いでいようとも、どんなに疲れていようとも、名前だけは、丁寧に書かなければならないんです。  ――名前を大切にしてほしい。自分を大切にしてほしい。自分を大切にすることで人生は拓けるんだ、とその教師は教えてくれたんだと思います。  私は何年もかかって気づきましたが――同じように、私もその教師の教えを受け継いで、誰かに伝えたいと思ったのです。
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