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自分のノートを一番上に乗せて、国語準備室へと運んでいく。『井上美樹』という名前がちらちらと視界に入る。恥ずかしく、避けたい文字が僕に訴えかけてくる。
僕は自分の名前が苦手だった。
『美樹』という女にしか見えない名前のせいで、中学生の頃にいじめられた。
それに僕は気弱で、できるだけ争いを避けたい大人しい性格だから、それもいじめっ子にとっては好都合だったのかもしれない。もし僕がもっと自分に自信があって、嫌な事は嫌だとはっきり言えるタイプなら、きっと美樹という名前でもいじめられることはなかったはずだ。
――そんな自分の弱さを棚に上げて、いじめられていた頃僕はよく『こんな名前じゃなければこんなひどい目には遭わなかったのに』と、自分の名前を悪者にしていた。そしてそんな不甲斐ない自分にも嫌気が差していた。
高校生になった今、名前が原因でいじめられることはなくなったが、自分の名前を見るたびに中学時代の苦い記憶を色々と思い出してしまうのだ。
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