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幹先生は一番上の僕のノートを手に取り、パラパラとめくっていく。自分の課題を目の前でチェックされていると、どんどん緊張してきたので、僕は黙ってぺこりとお辞儀をして、準備室を出ていこうとした。
「――井上くん」
扉に手をかけたところで、再び背後から幹先生の声が飛んできた。何を言われるのかひやひやしながら振り返る。幹先生は相変わらずの無表情のまま、僕をじいっと見つめている。
「あなた、自分の名前、もう少し丁寧に書きなさい」
「えっ」
課題に関して何か言われるのかと身構えていたので、僕は拍子抜けした。名前を丁寧に書く?
「名前……ですか?」
「そう。自分の名前は、一文字一文字時間をかけて丁寧に書きなさい。そうすれば――」
そうすれば――何かが変わるから。
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