幹と美樹

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 帰り道、僕は幹先生の最後の台詞を脳内でリフレインしていた。何かが変わるって、何だろう? 名前を丁寧に書くと、どんな良いことがあるんだろう?  もちろんやらないことには答えは出なかったし、高校生にもなって名前のコンプレックスがあること自体、僕はどこか恥ずかしかった。    そして何より、僕自身が名前を嫌うことに少し疲れていた。なにせ名前は一生付き合うことになるものだ。もう、いじめられていた時期は終わったんだし、過去は水に流して、自分の名前を受け入れたいと心のどこかで願っていた部分もあった。  ――だから僕はその日から、自分の名前を丁寧に書くようになった。僕自身は、字があまり綺麗なほうではなかったけれど、丁寧に書くことはできた。
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