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いつもの帰り道並列に歩きながらしょーもない会話をする俺と野崎。
いつもは授業の話や昨日のテレビ番組はどうだった、とかたわいない話ばかりだけれど今日の野崎は少し違った。
優しい雰囲気はあるのに妙に真面目な顔をして変な事を聞いてきたのだ。
「関田って佐々木と仲いいよな。いつもどんな話してんだ?」
「...え?」
いつもはそんな事聞かない野崎にびっくりして怪訝な目で野崎を見れば野崎は困ったように笑う。
「だって関田さ佐々木と話してる時顔赤いし仲良さそーだし...」
うっすらと頬を染めて言う野崎にまたきゅんっ、と胸が鳴った。
野崎はようするに少しは俺の事を気にしてくれているのだろうか。
しかし野崎にオマエの話をしてるんだよ、とも言えず赤くなる頬を必死に隠しながら野崎を見つめる。
「べ、別に...佐々木になんか赤くなんねぇから。佐々木とはマンガとか野崎としてるような話ばっかしてる。てか仲良いのは中学からの同級生だからだっつーか。」
もごもごと言えば野崎が嬉しそうに笑った。
その笑顔にチクリ、と胸が痛くなる。
あたりまえだ。嘘をついてしまったんだから。
佐々木と中学からの仲なのはホント。
けれど佐々木と話をするのは野崎の事ばかりなのだ。言えるワケがない。
「変な事聞いてごめんな。なんつーか、その、あんまりにも仲良くしてるから、その、ごめん。」
頬を真っ赤に染めて笑みを浮かべながら言う野崎なんて初めて見るもんだから心拍数がハンパない。ドクドクと心臓が煩いのだ。
恥ずかしいのに野崎から視線がはずせなくて、否、はずしたくなくてじっ、と見つめる。
そうすれば野崎は恥ずかしそうに一瞬視線を泳がせてそれから俺を真っ直ぐに見て言った。
「なぁ、関田、手、...繋いでもいいか?」
ドクン、と心臓を手で鷲掴みされたような錯覚に陥って壊れたポンプのようにドクン、ドクーン、と不規則に胸が鳴る。
嗚呼もう壊れてしまいそうだ。
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