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「寂しくなんかねぇし楽しみになんかしてねぇしっ!オマエもうどっか行けよ馬鹿!」
傍にあったクッションで俺をボフボフと叩く智に愛しさが込み上げる。泣きそうな目をして寂しかったと顔に書いてあるくせに強気な発言と態度に俺はゾクリと背筋を震わせた。
嗚呼苛めたい。
「ふぅん、智は寂しくなかったんだ。」
わざと低い声でそう言ってやればピクリ、と智の肩が跳ねる。クッションで俺を叩く手がピタリと止まった。
「楽しみにしてたのも俺だけだったんだね。智さぁ、そんなんで俺と付き合っている意味あるの?」
「...っ...、」
冷ややかに智を見つめそう言葉を吐けばふるふると智の睫毛が震える。もっと酷い事を言われたら泣いてしまうといった顔だ。
(可愛い。)
俺は満足気に内心笑うけれど表面はどこまでも冷ややかに続ける。
「別れたい?智は俺にどっか行って欲しいんだもんね。」
「...っ...!」
別れてやるつもりなんてさらさらないけれどわざとそう言えば智のもともと大きかった目が更に見開かれた。
あ、泣く、と思った時には既に智の大きな目からは涙が溢れ出していた。
「...っ...ひくっ...、」
小さく肩を震わせて涙を溢す智はひどく可愛い。そろそろ苛めるのもやめにしようかと思っていれば智の手が俺のスーツを掴んだ。
「ごめ、...ごめ、ん...」
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