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「セクハラになるから訊かないさ」
「お義母様が無くなったのも28歳ね」
「ああ」
「私の今の歳で亡くなるなんて、私には想像もできない。どう、私はお義母様ほどでは無いにしろ、良き妻、良き母かしら」
「理想の妻、理想の母だよ」
「褒めすぎだわ」
「何、話してるの」聡が話に割り込んできた。
「おかあさんは美人だなって、話してた」
「友達も言ってたよ。聡のお母さん、美人だなあって」
「あら、そうかしら」まんざらでもない表情をした。
右手を聡と左手を智子と手をつなぎ、別に誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
「俺は何があっても、お前たちを守る。絶対に守って見せる」
智子には聞こえたのだろうか。繋いだ手の力を入れた後で、手を腕に絡めてきて、つぶやいた。
「愛してるわ、あなたも聡も。心から」
僕は空を見上げた。青い空が眩しい。
今、こうして愛情に包まれた何気ない日常を過ごせている。
この上ない幸せで、涙が流れてきた。
そして、言った。
「おかあさん・・・、おかあさん、ありがとう」
完
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