幸福(しあわせ)

9/9
前へ
/9ページ
次へ
「セクハラになるから訊かないさ」 「お義母様(かあさま)が無くなったのも28歳ね」 「ああ」 「私の今の歳で亡くなるなんて、私には想像もできない。どう、私はお義母様(かあさま)ほどでは無いにしろ、良き妻、良き母かしら」 「理想の妻、理想の母だよ」 「褒めすぎだわ」 「何、話してるの」聡が話に割り込んできた。 「おかあさんは美人だなって、話してた」 「友達も言ってたよ。聡のお母さん、美人だなあって」 「あら、そうかしら」まんざらでもない表情をした。 右手を聡と左手を智子と手をつなぎ、別に誰に聞かせるでもなくつぶやいた。 「俺は何があっても、お前たちを守る。絶対に守って見せる」 智子には聞こえたのだろうか。繋いだ手の力を入れた後で、手を腕に絡めてきて、つぶやいた。 「愛してるわ、あなたも聡も。心から」 僕は空を見上げた。青い空が眩しい。 今、こうして愛情に包まれた何気ない日常を過ごせている。 この上ない幸せで、涙が流れてきた。 そして、言った。 「おかあさん・・・、おかあさん、ありがとう」 完
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加