第一話:入学式は謳歌する

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第一話:入学式は謳歌する

前略 新春になり、高校生活がそろそろ始まろうとしています、父さん母さんは元気にしていますか?元気ならなによりです。 僕はというと、新学期ということで緊張はありますが、楽しみで夜も7時間ほどしか眠れていませんね。。。 普通にぐっすり寝れているというツッコミは無しでお願いします。 それよりこの手紙が伝わる頃、僕は入学式の日だと思います、新たな1歩と新しい生活が始まります。 今後も何かあったら、随時連絡していこうと思います。またお会い出来たら嬉しいです。 草々 令和元年4月8日 櫻見 陽部より 毎日のように使っているシャーペンを机に置き、書き終えた手紙の間違えを見直す、彼にとってこれは手馴れた作業であったが、 「あ、また紙が汚れちゃったよ...何してんだろ、、、俺」 目元に手を当て、生暖かい液体が頬を流れ落ち、その先まで見て、寂しく微笑む。 「そんな彼の可哀想なお話しを少し語り部の僕が説明しよう。」 人にはどうしようも無いことを不可抗力と呼ぶのなら、彼に起こった現象もそう呼べるのだろうか? 「近いがちょっと違うだろう。」 彼にとって、それは突然起こった。 早朝に目を覚まし、夢を見ていたような気に晒されている、思い出せないだろうが辛い夢だったろう、汗を毎回のように体臭が臭うくらいにはかいて、 その度に手紙を書く、さっきのように親宛てや本人もよく知らない友達宛て、 「何をしているのか自分でも理解出来ていなかったはずだったろう。」 だが、謎の焦りが彼を突き動かす。 愛情や友情とは違う自分自身の身の危険、 普段の生活では感じることはないであろう、何かを救いたい衝動 「何かは分からないまま学校へ通い続け」 「そして月日は流される、誰もかもの意思を 無視して、、、再び目覚めたとき、高校2年生の春に時は一旦進む。」 櫻見が入学してから永刹学園(えいせつがくえん)は1年が経過した。 その間に親は交通事故で二人とも亡くなり、信じれる友は些細な事故で失ってしまった、 何故か親も友も、失うことを知っていた気がした、彼らに手紙を書いていたはずだった。 でも、もう手紙はない。 朝目覚めると、昔書いたはずの手紙は元からなかったものかのように、消えていた。 目覚めたら手紙を衝動的に書くという彼のその衝動も消えていた、多分初めからなかったんだろうと寝起きの回転していない脳で答えを出し、学校へと足を向かわせながら、この時期にピッタリな桜の花びら達を鑑賞して思いにフケていた。 失ったものが多かったけど得たものもある、そんな気がするよ、桜の花びら達は何か得たりするのかな。安心感がある。 心を落ち着かせた櫻見が学園についたところで、この物語に重要な”ある”トラブルが起きる時間まで、話は進む。 「次のページまで雑談を話そう」 「春の訪れは”彼ら”にとって素晴らしいものなのだろうか?この季節になると皮肉にも思ってしまう、桜から舞い落ちる花びら達は落ちる様を華麗や儚げだと目を向けられ、どこに行くかも決める暇なく、木の根元の周り1m~2mを舞う、その間に落下速度と同じくらいの横風に左右され、右往左往させられている、華麗だろうか?儚げだろうか? 入学式を迎える学生達にはこう想察して欲しいと願う、今しがたの自分達に似通っていると。周りに左右される心と同じだと」 「僕の話はこれで終わり、そして物語は始ま る」
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