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教室に入ると、毎日の決まったやり取りが始まる。
「よっす! 今日も愛兎は時間ギリギリじゃね~か」
朝から FULL MAX の元気で話し掛けてきたのは 戸塚 涼(とつか りょう)
涼とは小学校からの親友。
腐れ縁という言葉があるが、間違いなくその類。
華奢で女顔の僕とは正反対で、涼はワイルドな面構えで体格も良い。
THE 男子! とでも表現しておこうかな。
「おはよう涼! ギリでも間に合ったんだから良いだろっ?」
僕と涼は、日々と代り映えのない会話を交わす。
席に着いた僕の耳に、柔らか~な声が届く。
「愛兎くん、おはようございます」
「おはよう! 白百合」
隣の席に凛と座る美少女。
その名も 颯馬 白百合(そうま しらゆり)。
白百合は、名前の通りに真っ白で透き通った肌をしている。
長く伸ばした美麗な黒髪が似合う【和風美人】な女子。
いや、最早【女性】と定義しようじゃないか。
僕は、霊の存在同様に、神様を信じるタイプではない。
しかしながら、もしも神様がいらっしゃるのであれば、一言お礼を言わせて頂きたい。
『白百合の隣の席にして下さり、本当にありがとぅうございまっす!!』
そう心で叫ぶ春の朝だった。
昼休みになると、僕と涼。そして白百合は茶道部の部室に向かう。
白百合は茶道部に所属している為、部室を自由に使用出来る権利があるのだという。
まぁ茶道部とは名ばかりで、実際の活動内容ときたら、毎日ペットボトルに入った【こ~いお茶】を賞味し、2名だけの女子部員で女子トークを繰り広げている事には触れないでおこう。
部室の引き戸を開けると、もう1人の茶道部部員 麻野 霞(あさの かすみ)が、一足先に到着していた。
「みんな遅いよぉ! 霞はもぅお腹ペコペコだよぉ!」
「ごめんなさい霞。霞のクラスは、授業の終了が早かったのですね? お食事にしましょう」
「百合りんが謝る必要は無いけどさっ。ほら! 男どもは早く座る!!」
霞の僕と涼への対応は毎度の事と思い、僕達も席に着いた。
僕と涼。そして霞は同じ中学校出身。
霞のおかげで、白百合とも仲良くなれた。
『霞……。マジサンキュー』
隣のクラス2-B所属の霞は、お調子者の性格だが、それを演じているのを僕は知っている。
本来は空気を読んだり、誰よりも優しい一面を持った良識ある女子。
栗色のショートボブが似合い、赤いフレームの眼鏡を掛けていて、その奥にはクリクリした大きな瞳が特徴的な容姿をしている。
そんな繋がりがある4人は、プライベートでも仲が良い。
いつも昼休みは茶道部部室で昼食を食べる事が、なんとなくの決まりだった。特段、誰かが言い出した訳でもなく自然な流れ。
きっと友達ってそんな関係なのかな? と、思いにふけっていた。
同時に、僕と涼が茶道部部員では無いにも関わらず、部室を使っている事に対しての罪悪感が少しは頭を過ったが、今は良しとしておこう。
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