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「なんか愛兎の様子、最近変じゃねぇか?」
「え~、なになに!? マナちゃんの様子がどんな風に変なのぉ?」
野獣の様に、弁当に貪り付きながら涼が言い出した言葉に、眼鏡の奥の大きな瞳をキラキラさせながら霞がそう返した。
「いや、どんな風って言われちゃうとオレも上手く言えねぇんだけどさ。なんか虚ろというか……。眠そうというか……。愛兎? 恋でもしたか!?」
プー……!!
僕はタイミング悪く口に含んだ【こ~いお茶】を噴き出してしまった。
「な、な、な、なに言っちゃってくれてるんだよ涼!? 恋なんてしてないって!」
慌てふためきながらも、精一杯の反論。否定。
僕が白百合に対して恋心を抱いている事は、公表していない事実。
「え~……? なになに? そんな慌てちゃってマナちゃん怪しいよ? この霞さんに相談しなされよ~」
「だからっ、そんなんじゃないって!」
ニタニタと笑う霞に対しての精一杯の誤魔化し。嘘。
2対1になってしまっては僕に勝ち目はない。
涼と霞が手を組めば、それ程怖い物はない。
面倒な2人。最早 輩……。
そんな中、沈黙を貫いていた白百合が、使っていた箸を上品に置いたのが見えた。
「涼くんも、霞も想像で決めつけるのは良くないですよ?」
「霞は、ちょっと面白かったからつい……。ね? 涼ちん?」
「お、おう……」
ほら見た事か! 2人して白百合に怒られてやんの。まぁ、僕自身も白百合に対しての気持ちを隠しているから同罪かな。
すみません白百合。そして助けて頂きありがとう!
キミは女神です! 本日からビーナス白百合と心で呼ばせて下さい!
「でも、私も思うんですよね。最近の愛兎くん変ですよ? 何かありましたか?」
う”え”――――――!?
安堵させておいての、まさかの白百合さん参戦ですか!?
安心させてからの急降下ですか!?
こっちとら【命の綱】シートベルト閉め忘れてますけどぉ!!
どんだけ僕の心を弄ばれるおつもりですかぁ!?
「白百合もそう思うだろ? オレの目に狂いはないって事だな!」
「マナちゃ~ん? 百合りんもこう言っている訳だし。そろそろ白状してもらおうか?」
「そうですよ愛兎くん? みんな心配しているのですよ?」
はいはい。THE END。
これはこれは、急に【綱渡り】のピエロ状態って事ですかね!?
3対1じゃ勝てませんって。もう好きなだけ晒して下さいっ!!
僕は逃げ場が無いと悟って口を開いた。
「ちょっと寝不足なんだよね……。悩みが……あってさ」
「キャー! マナちゃん本当に恋の悩みなのぉ?」
「霞! もうちゃかすな!」
「うん。……ごめん」
真顔で話す僕にトドメめを刺すかの様に、尚もふざける霞に対して、涼が少しだけキツク釘を刺した。
涼の対応は無理もないだろう。
小学校から腐れ縁の涼とは、幾度となく助け合った仲。親友。
僕の家庭環境や事情も知っている涼は、僕が弱音を吐く事に対して敏感だった。
言葉には出さないが、すごく気に掛けて心配してくれているのが伝わってくる。
同時に、涼の家族にも感謝している。週に2回程は涼の家で晩御飯をご馳走になっている。
本当に助かっているよ涼。
同性の友達ってのは悪くないって心底思う。
「ありがとな涼。それに霞もゴメンな。僕を心配してくれているのに、はっきりした態度を取らない僕が悪かったよ。本当にゴメン」
「霞こそゴメン……。少しふざけ過ぎた」
「そうだぞ霞! オマエは度が過ぎる所があるからな」
「涼ちんに言われたくないけどねっ! 元はと言えば、涼ちんが 恋でもしたか? とか言ったのが始まりじゃんか!」
「それもそうだな……。オレが一番悪いじゃね~か!!」
いつもこんな感じで仲直り出来る今の関係が心地良い。
でも、このまま秘密にしていて良いのか?
僕は決心したんだ。ちゃんと伝えよう。
「みんな……。聞いて欲しい話があるんだ。放課後また此処に集まって欲しい」
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