第01章 : 放課後告白タイム

4/6
前へ
/155ページ
次へ
「なんか愛兎の様子、最近変じゃねぇか?」 「え~、なになに!? マナちゃんの様子がどんな風に変なのぉ?」  野獣の様に、弁当に貪り付きながら涼が言い出した言葉に、眼鏡の奥の大きな瞳をキラキラさせながら霞がそう返した。 「いや、どんな風って言われちゃうとオレも上手く言えねぇんだけどさ。なんか虚ろというか……。眠そうというか……。愛兎? 恋でもしたか!?」  プー……!!  僕はタイミング悪く口に含んだ【こ~いお茶】を噴き出してしまった。 「な、な、な、なに言っちゃってくれてるんだよ涼!? 恋なんてしてないって!」  慌てふためきながらも、精一杯の反論。否定。  僕が白百合に対して恋心を抱いている事は、公表していない事実。 「え~……? なになに? そんな慌てちゃってマナちゃん怪しいよ? この霞さんに相談しなされよ~」 「だからっ、そんなんじゃないって!」  ニタニタと笑う霞に対しての精一杯の誤魔化し。嘘。  2対1になってしまっては僕に勝ち目はない。  涼と霞が手を組めば、それ程怖い物はない。  面倒な2人。最早 輩……。  そんな中、沈黙を貫いていた白百合が、使っていた箸を上品に置いたのが見えた。 「涼くんも、霞も想像で決めつけるのは良くないですよ?」 「霞は、ちょっと面白かったからつい……。ね? 涼ちん?」 「お、おう……」  ほら見た事か! 2人して白百合に怒られてやんの。まぁ、僕自身も白百合に対しての気持ちを隠しているから同罪かな。  すみません白百合。そして助けて頂きありがとう!  キミは女神です! 本日からビーナス白百合と心で呼ばせて下さい! 「でも、私も思うんですよね。最近の愛兎くん変ですよ? 何かありましたか?」  う”え”――――――!?  安堵させておいての、まさかの白百合さん参戦ですか!?  安心させてからの急降下ですか!?  こっちとら【命の綱】シートベルト閉め忘れてますけどぉ!!  どんだけ僕の心を弄ばれるおつもりですかぁ!? 「白百合もそう思うだろ? オレの目に狂いはないって事だな!」 「マナちゃ~ん? 百合りんもこう言っている訳だし。そろそろ白状してもらおうか?」 「そうですよ愛兎くん? みんな心配しているのですよ?」 はいはい。THE END。  これはこれは、急に【綱渡り】のピエロ状態って事ですかね!?  3対1じゃ勝てませんって。もう好きなだけ晒して下さいっ!!  僕は逃げ場が無いと悟って口を開いた。 「ちょっと寝不足なんだよね……。悩みが……あってさ」 「キャー! マナちゃん本当に恋の悩みなのぉ?」 「霞! もうちゃかすな!」 「うん。……ごめん」  真顔で話す僕にトドメめを刺すかの様に、尚もふざける霞に対して、涼が少しだけキツク釘を刺した。  涼の対応は無理もないだろう。  小学校から腐れ縁の涼とは、幾度となく助け合った仲。親友。  僕の家庭環境や事情も知っている涼は、僕が弱音を吐く事に対して敏感だった。  言葉には出さないが、すごく気に掛けて心配してくれているのが伝わってくる。  同時に、涼の家族にも感謝している。週に2回程は涼の家で晩御飯をご馳走になっている。  本当に助かっているよ涼。  同性の友達ってのは悪くないって心底思う。 「ありがとな涼。それに霞もゴメンな。僕を心配してくれているのに、はっきりした態度を取らない僕が悪かったよ。本当にゴメン」 「霞こそゴメン……。少しふざけ過ぎた」 「そうだぞ霞! オマエは度が過ぎる所があるからな」 「涼ちんに言われたくないけどねっ! 元はと言えば、涼ちんが 恋でもしたか? とか言ったのが始まりじゃんか!」 「それもそうだな……。オレが一番悪いじゃね~か!!」 いつもこんな感じで仲直り出来る今の関係が心地良い。  でも、このまま秘密にしていて良いのか?  僕は決心したんだ。ちゃんと伝えよう。 「みんな……。聞いて欲しい話があるんだ。放課後また此処に集まって欲しい」
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加