第01章 : 放課後告白タイム

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 時間とは自然に流れていくもので、決して誰かが操れるものではないと思っている。  そう、この僕も同じ。  時間は流れ、美空学園は放課後の時に包まれた。  そして僕達4人は、約束の地へ。  茶道部部室を目指したのだった。  唐突ではあるが、ここで部室内の状況を整理しておこうと思う。  中央には、長い長方形の会議用テーブルが2つ並べて置いてある。  それを囲む様に、2脚ずつのパイプ椅子が並ぶ。  僕は、入口から見て右奥。僕の左隣には涼が、向かいには白百合。  そして対角線には霞が座る。  このパターンが毎度の定位置。  だからと言って、何も進展する話題でもないのだが、敢えて状況を整理してみた。  何故ならば、これから僕は秘密をカミングアウトするのだから。  これ位の時間の使用は良いだろう……。  どうせ、時間は止まってはくれないのだから。  何となく重い空気が僕達を包む。もしも時と場合ごとに、空気の重さに違いがあるとするのならば、本来大事件だと思うけれど……。  今は本当に重く感じるんだ。  準備は整った。  空気を重くした犯人。  この僕が、これまた重い口を開こうじゃないか。 「昼休みの続きなんだけどさ……」 「お、おぅ……。なんだよ聞いて欲しいって話って?」 「そ、そぅだよマナちゃん!? 急にあらたっまてど、どうしたの?」 「愛兎くん。大丈夫ですよ。私達に話してみて下さい」 あれ……?  何かすごく話しにくい雰囲気なのですが……。  涼と霞の動揺レベルがメーターを振り切っているではないか。 「絶対に笑わないで欲しい。僕さ、最近寝不足なんだよ……。ある事が原因でさ」  3人の視線が痛い。  そちら様方の、心の拍子が伝わってくるのですが。 「僕って一人暮らしだろ? 気のせいかもしれないけれど、ここ最近誰かに話し掛けられるんだよ……。夜中の2時になると、決まって毎日毎日。女の人の声で話し掛けられるんだ」 「はっ……!?」  3人は、言葉を発しはしないが口の形が物語っていた。 「ねぇ? ねぇ? 聞こえるんでしょう? って女の人の声が聞こえるんだ」 「あはははははは!!」  甲高い声で笑う霞に、3人はビックリしてしまう。 「霞! オマエ急にデカい声出すんじゃね~よ」  一番ビックリしていた涼が声を震わせている。 「ゴメン、ゴメン。昼休みのマナちゃんがあまりに真剣な顔してたから、霞はてっきり誰かに告白でもするのかと思っててさ。午後から授業の内容が全く頭に入ってこなかった程にずぅっと考えてたんだ。そしたら幽霊の話って……。うふふふ……。こりゃマジ草生える」 「霞は普段から授業の内容なんて、頭に入ってないだろうが」 「ヒドイ! 涼ちんにだけは言われたくないねっ!」  おいおい? お2人さん?   僕の悩み、幽霊話はどうなるんでしょうか……。 「霞も涼くんも、愛兎くんが真面目に話しているじゃないですか? ちゃんと聞きましょう」 「お、おぅ……」 「分かったよ……。百合りん」 「愛兎くん? 続きを話してみて下さい」 「ありがとう白百合」  僕は、ここ数日の出来事を詳細に打ち明けた。  午前2時になると、女の人に話し掛けられる事。  姿を見た事は無い事。(怖くて瞼を閉じたままとは言っていない)  気付くと朝になっている事。  こんな体験を信じてくれるのだろうか?  しかし、状況は違った。僕が真剣に話したからなのか、3人はからかう様子を見せてこない。  まぁ、白百合が誰かをからかう事は普段からもないのだが。
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