22人が本棚に入れています
本棚に追加
デリバリーした夕食が届き、ソファーの前にあるテーブルに広げる。
「いただきます」
か細い声を発し、米から口へ運ぶ。
『独りの食事って寂しいな』
慣れているつもりだが、実際の所、慣れてはいないのだろう。
結局は【つもり】なのだから。
周囲から良く言われる事ベスト3。
「憧れる」
「自由そう」
「なんかカッコいい」
カッコいいは理解出来る。そりゃ見た目ソコソコ、勉強もスポーツもソコソコ。そりゃ僕はカッコいいだろう!?
しかしながら、憧れも自由も、目の前の状況からするとそうでもない。
不自由があるから自由と感じられる。
自分の環境とは違うから憧れが生じる。
僕から言わせてもらえば、周囲の環境の方が憧れで、自由だ。
今日も変わり映えのない日常。生活。
20帖のLDKには、TVから流れる笑い声と、プラスチック容器に割り箸が当たる音だけが響いてた。
食事を終えた僕の行動は早い。
これも夜のルーティーンとでも、いっておこうかな。
食事の洗い物があれば洗う。
シャワーを浴びる。もちろん念入りに自身を洗浄する。
髪を乾かし歯を磨く。これももちろん念入りに。
スキンケアも忘れずに。ニキビ対策は大切。
その後は、漫画を読んだりゲームをしたり。
一般的な高校生と然程変わらないだろう。
理由は定かではないが、今日は疲れてしまった。
きっと、悩みを打ち明けた事が原因なのかもしれない。
スマホを確認しても、誰かからのSNS通知が届いている事もなく、ただ無機質な画面が23:00を告げていた。
いつもなら、まだ寝るには早い時間だが、今日は眠い。
と同時に、涼の言葉を思い出す。
「気にしない様にってのは無理かもしんね~けどよ、別の部屋で寝てみるとか、なんか対策してみたらどうだ?」
涼の言い付けを守ってみる事にしよう。
自室から毛布と枕を運んできた僕は、ソファーに転がる。
今日はリビングで寝よう。
季節は春。
ゴールデンウイークを目前としたこの季節も、夜はまだ少し冷える。
照明を消し、瞼を閉じてみた。
今日は早めに夢の世界へダイブ出来そうだ。
最初のコメントを投稿しよう!