第02章 : 優零と名付けた日

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 デリバリーした夕食が届き、ソファーの前にあるテーブルに広げる。 「いただきます」  か細い声を発し、米から口へ運ぶ。 『独りの食事って寂しいな』  慣れているつもりだが、実際の所、慣れてはいないのだろう。  結局は【つもり】なのだから。  周囲から良く言われる事ベスト3。 「憧れる」 「自由そう」 「なんかカッコいい」  カッコいいは理解出来る。そりゃ見た目ソコソコ、勉強もスポーツもソコソコ。そりゃ僕はカッコいいだろう!?  しかしながら、憧れも自由も、目の前の状況からするとそうでもない。  不自由があるから自由と感じられる。  自分の環境とは違うから憧れが生じる。  僕から言わせてもらえば、周囲の環境の方が憧れで、自由だ。  今日も変わり映えのない日常。生活。  20帖のLDKには、TVから流れる笑い声と、プラスチック容器に割り箸が当たる音だけが響いてた。  食事を終えた僕の行動は早い。  これも夜のルーティーンとでも、いっておこうかな。  食事の洗い物があれば洗う。  シャワーを浴びる。もちろん念入りに自身を洗浄する。  髪を乾かし歯を磨く。これももちろん念入りに。  スキンケアも忘れずに。ニキビ対策は大切。  その後は、漫画を読んだりゲームをしたり。  一般的な高校生と然程変わらないだろう。  理由は定かではないが、今日は疲れてしまった。  きっと、悩みを打ち明けた事が原因なのかもしれない。  スマホを確認しても、誰かからのSNS通知が届いている事もなく、ただ無機質な画面が23:00を告げていた。  いつもなら、まだ寝るには早い時間だが、今日は眠い。  と同時に、涼の言葉を思い出す。 「気にしない様にってのは無理かもしんね~けどよ、別の部屋で寝てみるとか、なんか対策してみたらどうだ?」  涼の言い付けを守ってみる事にしよう。  自室から毛布と枕を運んできた僕は、ソファーに転がる。  今日はリビングで寝よう。  季節は春。  ゴールデンウイークを目前としたこの季節も、夜はまだ少し冷える。  照明を消し、瞼を閉じてみた。  今日は早めに夢の世界へダイブ出来そうだ。
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