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四
「ただいまー」
夕梨花が帰って来た。私は合わせる顔がなくて、おずおずと玄関を覗きに行った。
「夕梨ちゃん、ごめんなさい……。大丈夫……じゃなかったよね……」
そう言うと、夕梨花は何も気にしてないようなスッキリした顔で、
「ああー、大丈夫大丈夫。逆にあの後楽しく話せて、仲良くなっちゃった」
「え……」
「いい人だね、たいきくん。今日は楽しかったってDMしといて~」
「う、うん」
「はぁー、疲れた。お母さんお風呂沸いてる~?」
夕梨花はリビングに入って行った。
状況がまるで掴めなかったし、やたらとご機嫌な様子が気にはなったけど、とりあえず部屋に戻って、言われたとおりたいきくんにDMを送ることにした。
“今帰り着きました。たいきくん今日はありがとう。楽しかった”
すると、たいきくんからすぐに返事が来た。
“お疲れさま。亀戸天神良かったね。来週もまいかに会えるの楽しみ!”
――え?
来週も、って、どういうこと? 夕梨花、来週もたいきくんと会うつもりなの……? なんで? 一回だけの約束だったのに。
心がざわめきだつ。また夕梨花への嫉妬と不信感が沸き起こる。
私はいてもたってもいられず、再び階下に降りて、夕梨花が入っているバスルームのドアを開けた。
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