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五
だから、日曜日に待ち合わせ場所の東京駅構内で、たいきくんが私の顔を見るなり「まいか~」と手を振った時には、何か勘違いされていると思って、私は夕梨花と顔を見合わせたのだ。
ところが夕梨花は、満面の笑みで私の肩に両手を置いて言う。
「はい、じゃあお姉ちゃん、たいきくんとのデート楽しんでね! 私は忙しいからもう帰りま~す!」
夕梨花はそう言うと、私達を残してさっさと人混みの中に紛れてしまった。
「えっ、夕梨ちゃんちょっと……あっ」
妹を夕梨ちゃんと呼んでしまったことに気づき、慌てて口を手で塞いでたいきくんのほうを見た。
すると、たいきくんはいたずらっぽい顔で、「もう知ってるよ」と言う。
「まいか、酷いじゃん俺に嘘つくなんて。妹さんから全部聞いたよ」
「えっ……」
「先週神社行った時さぁ、俺、なんかイメージ違うな、リアルとSNSでこんなに差があるもんかなって、不思議に思ってたんだよね。神社の話あんまりピンと来てなかったし、撮った写真もまいからしくないアングルだし、もっと言うと参拝のしかたも曖昧だしで……。でも顔はどう見ても写真と同じだし、緊張してるだけかなぁって」
それを聞いて、目が潤んでしまった。たいきくんは、夕梨花に違和感を覚えてくれてたんだ。まいからしくないって、ちゃんと気づいてくれたんだ。
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