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仮に外見の問題が無くたって、友達のいない神社オタクでリアルのコミュニケーションが苦手な私が、好きな人と初対面で二人で会うなんて、考えただけで嬉しさより緊張と不安と恐怖でどうにかなりそう。
SNSで文字だけで繋がって、その他のことは何も知らずに仲良くしてくれる相手に、自分の素性をさらけ出すなんて、私にとっては「嫌ってください」と言っているようなものなのだ。
「ねぇ夕梨ちゃんさ、私の代わりにたいきくんに会ってくれない……?」
「はぁ!?」
「だって、向こうは夕梨ちゃんの顔を想像してるのに、私が会うわけにいかないよ……」
「じゃ断りなよ。直接会うのはムリ、ゴメン! って言っときゃいいよ」
「でも、断ってこれまでどおり仲良くできなくなったら困るし……。お願い、一度だけでいいから。一度だけって約束にしてもらうから。夕梨ちゃんの好きなケーキ奢ってあげるから!」
私はソファの前に座り込み、一生懸命頭を下げて頼み込んだ。
夕梨花はゆっくりと体を起こしてこちらへ向き直すと、言った。
「ケーキと洋服買ってくれるなら、一回だけなら受ける」
「う、強欲なやつ……」
「写真晒された慰謝料も込み」
「わかった、わかったよ……」
今回ばかりは全面的に私が悪いから仕方ない。私は夕梨花の条件で手を打ち、たいきくんと会う約束をした。
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