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二
ちょうど藤の花の季節だからということで、江東区の亀戸天神社に行くことになった。
ここは縁結びとかではなく、学問の神様だから、変な期待や勘ぐりをしなくてすむという利点がある。東京大神宮とか定番のスポットに行くよりは、地味でツウ好みで良い。見所もたくさんあるし、庭園がとても華やかで、池にカメがたくさんいて、都心の神社の中では私のお気に入り上位に入る。
夕梨花は当然ながら全く神社の知識が無いので、アドバイスを三つ出した。
ひとつめは、緊張してるフリをして、できるだけ相手に喋らせて相づちに撤すること。
ふたつめは、浮世絵になってるスポットだけ覚えておいて、自分から話題に出すこと。
みっつめは、困ったときはLINEで私に聞くこと。なお、スマホの着信音は切っておくこと。
「めんどくさいけど、服のためだから頑張るか」
「よろしくね。とにかく、嫌われないようにだけ、お願い!」
そして当日、たいきくんとは午後二時に錦糸町駅で待ち合わせた。
先に夕梨花を北口改札前の柱で待たせて、私は少し離れたところから盗み見しながら、たいきくんが来るのを待った。
この人混みの中から今にも彼が現れると思うと、緊張して体が強張って、ドキドキと心臓が落ち着かなくなった。
どうか、何事もなく終わりますように。替え玉だとバレませんように……!
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