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 二人は新緑の陽気に包まれた錦糸公園を抜けて、ぎこちない距離を保ちながら亀戸天神へと歩いていく。私はその後ろを二十メートルくらい離れてついて行った。  二人が無事に鳥居をくぐったのを見届けてから、付近のお店を見て回って時間をつぶし、しばらくしてからこっそり私も境内に入った。  藤棚は(あで)やかな紫色をたなびかせて、大勢の参拝客を魅了していた。  私はその人波から外れて、池の上の通路から、カメが積み重なって甲羅干しする姿をぼんやりと眺めて過ごした。  夕梨花からは全然連絡が来ない。きっとうまくやれているのだろう。そう思うと、助かっているはずなのに、胸が痛んだ。 “神社おわったー。喫茶店行くって。今から入口の丸い橋渡る”  夕梨花からLINEが入った。 “了解”  一言送り、私は急いで太鼓橋へと駆けた。  橋に登ると、二人が鳥居を出て歩く姿が見えた。  途端にお腹の辺りがぞっとして私はその場に立ち尽くした。  最初の距離感はどこへやら、二人は笑顔で仲睦まじそうに話している。そしてその二つの指先は、つながっていた。  なんで――!?  肩から背中へと悪寒が走る。息が詰まる。  夕梨花への嫉妬とたいきくんへの怒りが制御不能にこみ上げる。  まいかは私だよ!  叫びたいのに、叫べなかった。私の体はその屈辱を、涙に変えて静かに吐き出した。  好きな人が妹と手をつなぐのを、阻止することすらできない。  黙って見ているしかできない。  夕梨花のように可愛く生まれなかった、ただそれだけで、どうしてこんなにもみじめな思いをしなきゃいけないの?  悲しくて悔しくて、私は鮮やかな赤色の欄干にうずくまって泣いた。  
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