17人が本棚に入れています
本棚に追加
三
“風鈴堂ってお店に入った。席空いてるよー”
夕梨花からのLINEを見て、私は少し冷静さを取り戻した。
そうだ。夕梨花は別にたいきくんを好きなわけではない。あくまでも、私の身代わりを務めてくれているだけなのだ。
そしてそれを頼んだのは私なのに、何を腹を立てているのだろう。
私は気を取り直して、二人がいるお店に向かった。
風鈴堂は、たいきくんが好きそうな和風カフェだった。“まいか”と来るために調べててくれたのかもしれない。
奥の席に二人の姿を見つけると、私はちょうど斜めにたいきくんが見える窓際の席へと座った。ここならギリギリ声も届く。
“風鈴堂入りました”
夕梨花はLINEに気づくと、
“おけざむらい”
と返事をくれた。
私は抹茶ケーキとお茶を頼んでから、二人の声に耳を傾けてみた。
「それ、美味しい?」
「うん」
「何味?」
「えっと……チーズみたいな?」
夕梨花は食レポが下手だ。
“これ何味って言えばいいの?”
食べ始める前に撮ったであろう写真がLINEで送られてきた。
そこに映っているものとメニュー表を照らし合わせて、おそらく抹茶ティラミスだろうと推測する。
最初のコメントを投稿しよう!