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夕梨花が振り返る。
「お姉ちゃん……」
「え?」
「すみません、私、まいかの姉です。妹が、初めてたいきくんと会うのにうまく話せないかもしれないから、って……、だから私がLINEでアドバイス送ってて、それを見てたんです。ごめんなさい。あなたと居てつまらなかったんじゃなくて……」
そこでぐっと涙がこみ上げたのを、飲み込んで、続ける。
「あなたに、嫌われたくないから、少しでも良いように見せたくて、ずるいことして、ごめんなさい。でも、……妹は、あなたと友達になれて、毎日楽しくて、幸せで、だから……これからも仲良くしてください!」
私は頭を下げて、踵を返すと、驚いてこちらを見ていた店員さんに千円札を渡して、お店を飛び出した。お客さま、と呼び止める声が聞こえたけど、足は止まらなかった。
涙がぼろぼろ流れていく。息が上がって嗚咽混じりの涙を両手で交互に拭きながら、私は駅を目指して走った。
頭がぐちゃぐちゃになって、途中から何を言ったかはっきり思い出せなかった。
ただ、たいきくんにまいかを嫌ってほしくない――夕梨花をフォローするよりも、その気持ちで私は動いていた。
夕梨花は今ごろ、姉の暴走をたいきくんに詫びているのだろうか。余計に迷惑をかけてしまった。
私は、後先考えず恥を晒したことを後悔して、暗い気持ちで家に帰り着いた。
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