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「真理。霧画さんは?」
「恵ちゃんと同じく。多分、東京よ。朝早くから出かけて行ったわ。何でも偉い人の恋愛相談ですって。姉さん有名な占い師だけど恋愛相談だけはダメなのよ」
「え! じゃあ、電車で東京へ行くのか?」
「そうよ。赤羽さん。運転免許持ってないでしょ」
…………
辺りの雑踏が全くしない。耳に入ってくるのは、どこからも悲鳴だけであった。風も強くなり、寒さが厳しくなっている。
私の力では、もうどうにもならないようだ。
目の前のバス停にバスが停まっていた。
真理はバスを使わなかった。藤代駅まで私たちは不可解な危険の中。駅まで一時間ほど歩くことになった。
このまま真理が危険なところを察知していけば、無事に東京まで行けるのでは? 私は希望的観測をしていた。
「あの四枚目の手紙のことを思い出して」
「待っている……か」
南米から帰ってくると、安浦たちからの手紙が家に届いた。けれでも、差出人不明のもう一枚の手紙があった。その手紙には「待っている」とだけ書かれていた。
幾線もの闇の線が飛来する夜の空からカラスの群れが舞ってきた。何やら羽音が近づき私たちの頭上に集まっている。
「赤羽さん! お願い! 迎え撃ってちょうだい!」
頭を抱えて蹲る真理と私の頭上に、カラスの群れが急降下してきた。私は不思議な力を使う。数が多く右手ではどうしようもないので、両手を使って見えない力で変容していくと、数多のカラスは血飛沫を上げて消えていく。その時、不思議な力を素通りしたカラスが私の腕に突撃してきた。
私は傷つき血を噴き出していく両腕を気にせずに迎え撃った。一度に数体のカラスを変容しているのだが、どうしてもきつくなりだした。たまらなくなって、真理をだき抱えて私はその場から逃げ出した。真里を抱えているから数分としないうちに息が切れる。
「赤羽さん。大丈夫? まだよ! 向こうからも何かが来るわ!」
「わかった!」
真理の言う場所へと右の掌を向けると、キラーであろう。おぞましい赤のペンキで塗りたくったかのようなガスマスクを被った巨体が数十人も現れた。手にはそれぞれゴムホースを持っている。
緑色の家庭用のゴムホースから何かの毒々しい液体が放水された。
私は呉林を抱きかかえて空を飛んだ。
真理と空中を高く飛んでいると、嫌でも闇夜の空は広大なパノラマとなって視界に入ってきた。空からの鋭利な線が、まるで槍のように地上に降り注ぎ、藤代全体へと落ちてきていた。遥か遠くを見ると、超巨大な色とりどりの光を発する半透明な隕石のようなものまでが落ちている。何故か空の涙のようにも思えた。
もう、世界の終わりなのでは?
こんな、私に何ができるのだろうか?
覚醒した力では今のところどうしようもないのでは?
私は心底動揺をした。
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