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「おまえはかわいいよ。なにしても」
「!?」
(ええっ!?)
あまりにも、黒崎さんが私のことを褒めてくれる。
こんな場所で。
こんなことを言うなんて、黒崎さんじゃないみたい。
「あ、あの・・・!どうしたんですか・・・!?」
「なにが」
「なにがって・・・黒崎さん、そんなこと、今まで言ったことないですよっ」
朝、車の中でちょこっと言ってくれたけど。
こんなふうに、向き合って何度も言ってくれるのは、今が初めてだったから。
「そんなの・・・付き合ってない時に言えねえだろ。思ってても」
「え?」
「・・・って、オレも、普段はあんまり言わねえよ。付き合ってても。そういうこと」
「確かにどうかしてんな」と、最後にひと言付け足した。
そして我に返ったように、顔を赤く染めていた。
「・・・まあ、とにかく、言わないかもしれないけど。思ってるよ、いつも」
照れたようにそれだけ言うと、黒崎さんは咳払いをして話題を変えた。
「・・・咲良は、あと二年は学生だろ。卒業したら、何かやりたいこととかあるのか」
結婚のことは、とりあえず置いておいて。
なりたい職業はあるかと聞かれた。
「はい。最近、佐和子おばさまのお手伝いができたらなって考えていて」
「へえ・・・事務職の方か」
「はい。まだいろいろ考えている最中ですけど・・・昔から、おばさまにはすごく憧れていたんです。
理事長をやるって言ってくれたおばさまの、力になれたらなって思います」
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