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(ありえねえ・・・)
毎回、ただの捜査の手伝いだろーが。
オレじゃなくても誰でも可能。今度こそなんてありえない。
けど、署長は立場を気にしてる。
本部長に逆らえば、どうなるかわかんねーもんな・・・。
「た、頼む、黒崎!来年、娘が結婚するんだ」
「・・・はあ」
「盛大にハワイでやるんだよ。それで親族の旅費、全部俺が出すってもう言っちゃったんだよ!だから降格でもしたら大変なんだよ!!」
(・・・なんだそれ・・・)
親族の旅費全部って。
何人分かは知らないが、降格せずとも普通に無謀な約束だろーが・・・。
ため息をつくオレを見て、署長は涙目で懇願してくる。
「た、頼む・・・!頼まれてくれ・・・!」
(・・・めんどくせえな・・・)
こういうのは本気で苦手。
あまりにも面倒で、わかった、と返事をしそうになったとき。
「署長」
後ろから声がした。
振り向くと、市谷さんが無表情で立っていた。
「明日なら、オレが出ますよ」
その申し出に驚いた。
けれど署長は、オレよりもっと驚いていた。
「は!?な、なんでだ!ダメなんだ、黒崎じゃないと」
「黒崎じゃないとって・・・これまでの休出、全部誰でもできることだったじゃないですか。多分今回もそうですよ。それに、黒崎の代わりをオレができないとも思えないので」
市谷さんがさらっと言った。
ムカつくが、否定もできず言い返せない。
「い、いや、しかし・・・」
「今度監査が入りますよね。病休明けの黒崎が二か月も休みなしなんて、バレたらそれこそマズイんじゃないでしょうか」
「う・・・ま、まあ・・・確かに・・・」
困った、と頭を抱える署長に対し、市谷さんは淡々と言う。
「オレが勝手に交代したって言っていいですよ。オレは、本部長とたいして関わることないし」
「そ、そうか・・・!そうだな、じゃあ・・・そんな感じで」
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