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そう言うと、署長はそそくさとその場を立ち去った。
なんか、逆に清々しいな・・・。
「・・・ありがとうございます」
一連の流れに驚きながら、市谷さんに礼を言う。
ありがたいけど、市谷さんは問題ないのか。
「奥さん、大丈夫なんですか」
「ああ。昨日から、彼女の母親とお義姉さんが来てくれてるから」
「・・・そうですか」
市谷さんの奥さんは妊娠中。
何か月とかは知らないが、つわりがひどいと岡本経由で聞いている。
けど、母親と姉がいるのなら、不安はまあないだろう。
「おまえこそ大丈夫なのか。婚約したんだろ?その・・・羽鳥さんと」
「・・・っ」
市谷さんと、こういう話を今まで一度もしたことはない。
驚きとともに、気恥ずかしいような思いになった。
「・・・まあ、はい」
「本部長の溺愛ぶりはすごいしな。婚約なんて、おもしろくないんだろうけど」
「・・・そうですね」
「けど、おまえが仕事ばかりじゃ寂しい思いをしてるだろ。せっかくだから、明日はどっか連れて行ってやったらどうだ」
「は・・・」
(・・・マジか・・・)
市谷さんから、こういうことを言われるとは思わなかった。
この人は、結婚してから本当に人間変わった気がする。
昔は、こんなことを言う人じゃなかったんだが。
「日曜も普通に休んでいいから。なんか言われたら、オレが受けとく」
「・・・はい。ありがとうございます」
子どもが生まれたら、市谷さんの休出は代わりに出るか。
そんなことを考えて、オレは咲良に電話をかけた。
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