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「ほんとですか!?」
明日会えると伝えると、咲良はとても喜んでいた。
ここまで弾んだ声は久しぶりに聞く。
よかった、と、素直に思う。
行きたい場所を尋ねると、「そうですね・・・」としばらく悩んでいたが、電話口から、突然はっとしたような声がした。
「でも、久しぶりのお休みだったら家でのんびりしたいんじゃ・・・」
心配そうな声で言う。
2ヶ月もオレの都合で会えなかったんだし、怒ったっていいとこだけど。
「そういうのは気にすんな」
「・・・でも」
「たまには普通に出かけたいし。咲良の行きたいとこでいい。オレは、おまえに会えればどこでもいいから」
言うと、電話口が無言になった。
どこでもいいって、投げやりだったか。
「あ・・・あの、じゃあ、映画館に行きたいです!」
気を悪くしたかと思ったが、明るい声が返ってきた。
とりあえず、ほっとする。
「いいよ。何か観たい映画があんの?」
「はい。千穂ちゃんが観に行って、よかったって言っていた映画があって・・・」
最近話題のアニメ映画の題名を言う。
アニメと言っても内容は深く、いろんな賞を取ったんだっけ。
「・・・子どもっぽいですか?」
「いや、いいよ。おもしろそうだし」
「そうですか・・・よかった」
嬉しそうな声がした。
本当に、咲良が喜ぶとこならどこでもいいし、内容なんてなんでもよかった。
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