春風が吹くころに 4

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「だからそのとき結婚しよう」 「は?」 「結婚しよう、ゲンちゃん」  にっこり笑ったあたしを見たまま、ゲンちゃんは「は?」という顔で固まっている。  あたしはゲンちゃんのほっぺを、手のひらでぺちんと叩いた。 「わかった? ゲンちゃん」 「え……でも……」 「でもなによ?」 「そのとき俺、何歳だと思ってんだよ? お前とは全然釣り合わない……」 「何歳でもかまわないよ。あたしがゲンちゃんを拾って、本当の家族になる。そして一生面倒みてあげる。なにか不満ある?」 「いや……」  ゲンちゃんはそこでいったん言葉を止めてから、まっすぐあたしを見つめて言った。 「不満なんかあるはずない」  心の奥が、ふんわりとあたたかくなる。 「じゃあそれまで彼女作んないでよ。わかった?」  あたしがもう一度ほっぺを叩くと、ゲンちゃんがやっと、いつもの憎らしい笑顔を見せた。 「わかりました。そのかわりお前も、変な男に引っかかるなよ?」 「ゲンちゃんより変な男はいないよ」  あたしはにっと笑って、ゲンちゃんから離れる。 「じゃ、また」  軽く手を上げてそう言ったら、ゲンちゃんも手を上げて言った。 「おう、またな」  春風が吹く中で、ゲンちゃんが笑った。
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