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「ゲンちゃん」
ゲンちゃんは手すりにもたれて、空に向かってタバコの煙をはいている。
「タバコやめなよ」
「お前がいなくなったらやめるよ」
あたしはまっすぐ歩いて、ゲンちゃんの手からタバコを取り上げ灰皿で消した。
「いますぐやめて」
「うっせぇなぁ、お前は」
ゲンちゃんが頭をかきながら、めんどくさそうにあたしを見る。あたしはそんなゲンちゃんに、にっと白い歯を見せる。
「じゃあ、行くね」
「あ、ちょっと待て」
ゲンちゃんはジーンズのお尻のポケットから何かを取り出して、あたしに差し出した。
「これ持ってけ」
あたしの目の前にあるのは、銀行の通帳と印鑑。そっと手に取り見てみると、あたしの名前が書いてあった。
「ママから巻き上げた金は全部ここに入れてある。お前が大学行くとき、使おうと思って」
あたしは黙って通帳を開いた。わずかずつだけど、お金が定期的に入金されている。
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